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ゲイ・ポルノとは、ピンク映画の傍流の一つで、男性同性愛者(ゲイ)向けに製作される映画である。薔薇族映画と呼ばれた時期もあった。文献などによってはホモ映画、男色映画と呼ぶ場合もあるが、差別的ニュアンスがあるので製作配給会社や劇場側が能動的に使う事はまず無い(いくつかの作品タイトルには「ホモ」という表現があるものの、これには差別的ニュアンスはないと考えられる)。ちなみに、レズビアンが観る)レズビアン・ポルノと呼ばれるべき作品は(日活ロマンポルノやピンク映画で、男性の嗜好という点から描かれた作品を除いて)現在に至るまで作られていない。

なお、一般映画においてもゲイやレズビアンを扱った映画があるが、そちらはレズビアン・ゲイ映画を参照のこと。

製作・配給


製作配給会社として、ENKプロモーション(※)(東梅田日活株式会社、以下ENK)とオーピー映画(大蔵映画子会社、2001年に親会社から製作配給部門が移管。以下オーピー)がある。ENKは大阪市で成人映画館(以下、成人館)を経営する傍らゲイ・ポルノの製作を行っているが、古くは日活ロマンポルノにおいて共同企画型のロマンポルノ作品(『不倫』曾根中生監督、1986年)や日活買取のピンク映画を制作しており、最近ではエクセスフィルム(新日本映像株式会社)においてピンク映画を製作している。また、オーピーはピンク映画配給大手である。※2006年11月現在、ENKプロモーションは製作を休止している。

作品


文字通り、男性同性愛者向けの性的な表現を含む成人映画であるが、監督・スタッフ・俳優などはピンク映画と重なる部分が多々ある。ピンク映画と異なり、男優が主演となる。登場人物はみなゲイかもしくはゲイの予備軍とするのが事実上のルールとなっており、これと濡れ場の回数以外は作品のカラーは監督や脚本家の裁量に任されている。ゲイという独特の縛りがあるものの、環境は主流であるピンク映画と酷似している。ゲイという条件が設定されているが、いわば「スタート」として設定されているため、ゲイそのものをテーマの「ゴール」とする一般的なゲイ映画とは違った視点を持つ作品やテーマをより深く掘り下げていく作品も多い。また、観客がゲイという当事者であり身近に抱える問題を取り上げる事もあるため、敢えて悲観的にはせず軽く客観的に見つめることができる様に仕上げるなど一般のゲイ映画とは大幅に違っている場合もある。

たとえば、ゲイ・ポルノ初期の作品『ぼくらの季節』は、「ゲイのカップルが赤ん坊/子供を得る」という永遠のテーマを、時代的にゲイである事を隠して生きてきた彼らの父親達を交えながら、1980年代らしい明るいコメディ・タッチで描いている(なお、このテーマは一般ゲイ映画の『ハッシュ!』でも取り上げられており、ゲイ・ポルノにおいても『こんな、ふたり池島ゆたか監督、1998年、ENKで再度取り上げられている)。

さらにはゲイ・ポルノの裁量の大きさを活用して各種のパロディ作品(例えば007シリーズや『新世紀エヴァンゲリオン』など)やサイコ・ホラー佐藤寿保監督作品など)、ミステリーなども作られている。ゲイ・ポルノとして初めてのピンク大賞を受賞した『思いはあなただけ~I Thought About you~』はゲイの探偵が活躍(?)するハードボイルド作品である。また、ピンク映画でも活躍している女流監督の浜野佐知作品のようにゲイビデオ並みのハードコアを目指した作品もある。このような作品群は、ゲイ・ポルノが決して社会派映画やポルノといった枠組みに捉われないエンターテインメントを指向している証拠であり、一般のゲイ映画とは一線を画する特徴でもある。

初期には、こうした劇映画のほかにゲイ・シーンを当事者の許可を得て撮影したセミ・ドキュメンタリー作品も作られていた。

またピンク映画同様、単なる成人映画を超えた作品もあり、海外の映画祭東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に出品した作品もある。

観客と上映館


基本的にゲイを扱った性的な映画であり、ゲイが鑑賞する事を念頭に置くため男性が中心となる。映画鑑賞を目的とする観客や特定の男優のファン、映画そのものよりも専門館でのイベントやゲイ同士の交流を目的とする観客もあり、千差万別である。一部にはいわゆるやおいボーイズラブといったジャンルに重複すること等によって女性ファンが存在する。ゲイ・ポルノ上映館は専門化されており、ゲイ向けのストリップショーを開催したり(一般のピンク映画においても、1960-70年代にはストリップ併営という興行もあった)、有料の個室を設けるなど発展場としての機能を設けている事も多い。また、大阪・堂山町(東梅田)、横浜・野毛町、東京・新宿二丁目(現在は閉館)などゲイの多く集まる歓楽街に立地しており、こうした地域の情報基地としての側面も併せ持つ。館内の売店や受付においてゲイ雑誌やゲイビデオ、ゲイ向けのアダルトグッズが販売されている事もある。また、休憩室に雑記帳が置かれることもあり、単なる出会いを求める書き込みばかりでなく、ゲイとしての悩みに対する応酬が書かれていたりすることもあった。ピンク映画以上に、ゲイのコミュニティと密着している事が、専門館の大きな特徴といえる。

ゲイ・ポルノの作品数は主流のピンク映画に比べて非常に少ない。このため、成人館は一週間三本立ての上映を目安としているのに対し、専門館は二週間~一ヶ月で二本立てであり、再上映作品や一般ゲイ映画を上映する事もある(ただし、最近ではピンク映画の製作本数減少から、成人館でも新版(旧作)上映や日活ロマンポルノの再上映が増えつつある)。休日を挟んだ上映期間中の5日間程度、ストリップショーを同時開催することもある。

歴史


1982年雑誌薔薇族』編集長であった伊藤文學が、「自らの同性愛を悩みや異常性欲として捉えている人達へ、同性愛が間違った存在では無いという事を知らしめたい」という考えから同性愛者向けの映画制作を企画。この企画にいくつかのピンク映画関係者が賛同した。俳優松浦康治が監督した同性愛者向けの映画作品三本立て(『白い牡鹿たち』『薔薇と海と太陽と』『薔薇の星座』)が東映セントラルフィルムによって配給され、東京・大阪の成人館で上映されて人気を博した。このうち、大阪での上映を担当した興行会社・東梅田日活が1983年、ENK名義で『巨根伝説 美しき謎』(中村幻児監督、大杉漣出演)、『薔薇の館 男男(ホモ)達のパッション』(東郷健監督)を発表し、恒常的なゲイ・ポルノの製作を開始する。当初、東梅田日活のみでの上映であったが、とくに『巨根伝説―』は話題となって全国の成人館で順次公開された。翌年にはENKがゲイ・ポルノ専門館である「東梅田ローズ劇場」を開館する。詳しい年数は不明であるが、新世界など大阪の繁華街を中心に専門館が開設された。また、この時期にはゲイ・ポルノの人気を目の当たりにした既存の成人館がゲイ・ポルノに掛け換わる事もあった。

その後、1984年に大蔵映画がENKと提携し、ゲイ・ポルノの製作・配給を開始(第一弾は『黄昏のナルシー小林悟監督、『アポロ MY LOVE』新倉直人監督…小林悟の別名義)。順次、大蔵系の専門館が大都市圏を中心に整備されていった。また、この上映館において、ゲイ向けのストリップショーが行われるようになった。

様々な理由から本流のピンク映画が衰退時期に至った1990年代前半においても、専門館は映画・ショー鑑賞もさることながら「出会い」を求める観客達で混雑していたといわれる(この時期の専門館の風景は『シネマHOMOパラダイス山本竜二監督、1993年、ENKという作品にもされている)。

現状


しかし、ピンク映画同様、近年は観客動員数は下降線を辿っているといわれる。近年では映画祭に出品されるなど、その知名度や質はむしろ上昇しつつあるといわれるが、ピンク映画同様、客足には反映されていないとみられている。ゲイ・ポルノが評価されるのはもっぱら一般的な映画祭などであり、こうした観客を専門館に足に運ばせるのは環境的に困難であるし、また、専門館や配給会社もそれを望んでいない事も多い。こうした専門館は、ピンク映画以上にコミュニティに接近しているため、ゲイ達の取り巻く環境の変化も大きい要因となっている。

専門館の特徴の一つである交流という面では、インターネットにはゲイ向けのBBS出会い系サイトが登場し、携帯電話コンテンツにもゲイ向けのソフトが現れている。また、有料系発展場が地方にも設けられるようになり、都市部に限定される専門館に足を運ぶ必要が無くなった事も大きい。とくにプライベートプライバシーを重視する若年層にはその傾向が強いといわれている。

また、ピンク映画同様ゲイビデオが流通するようになり、専門のレーベルが数多く立ち上がったことにより細分化された性指向に対応出来るようになった。また、過激な描写も可能で、さらに完全なプライベート内で鑑賞できる事も大きく客足を低下させている原因と見られる。

専門館以外で見たい場合


一般の観客が専門館に入る事は容易とは言い難い。専門館においては、一般観客(とくに女性)は事前に劇場側に申し込めば配慮してくれる場合もある。しかし、逆にこうした一般客を冷やかしと判断し入館を拒否する上映館もある。これは、ゲイ・コミュニティの一端としての環境を壊したくないという考えがある。また、観客側のプライバシーに抵触する事もあり得るジャンルのため、専門館側の対応はデリケートといえる。このため、専門館以外でゲイ・ポルノ作品を見る方法としては、主に3つが挙げられる。

  • 各種映画祭 - 映画祭での上映としては東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が挙げられる。また、ピンク映画雑誌『PG』が主催する年度順ピンク映画ベスト10に入る場合もあり、この場合、稀ではあるが、毎年4月中に池袋新文芸座で開催される「ピンク大賞」で上映されることもある。
  • ミニシアター名画座での特集上映 - ミニシアターや名画座において、監督や俳優の特集上映会でも一般作品やピンク映画と共にゲイ・ポルノが公開される事もある。また、過去には一般的なレズビアン・ゲイ映画と共に特集上映された事もある。ただし、大都市圏の小規模上映(成人映画という性格を踏まえてレイトショーオールナイト上映が多い)に限られている事がほとんどで、観客側は的確に上映情報を掴んでいないと見逃す場合も多い。
  • ビデオやDVDといった二次ソフト - 歴史が古くフィルムがジャンク(廃棄)されていることも多数あるピンク映画に比べて、ゲイ・ポルノは数多くの作品がソフト化されている(なお旧作のフィルムそのものも何回でも再上映できるように配給会社が普通のピンク映画以上に丁寧に保管しているといわれる)。上記二つがいわゆる「名作」や「受賞作」が限定的に上映されるのに対し、こちらはより専門館に近いセレクションであり、いわゆる凡作やカルト作品なども鑑賞できる(『巨根伝説-』のように現在は海外でのみソフト化している作品もある)。

ただし、作品の特殊性からセルにしろレンタルにしろ、大都市圏での流通に限られている事が多いので、地方ではインターネットなどによる通信販売に限定される(ENK、オーピーともにHP内にセルコーナーを設けている)。また、ピンク映画の第二の上映館ともいえるCS放送はほとんど行われていない。

最近ではインターネットにおいて有料でストリーミング放送している事もある。

代表的な作品


古い製作年順に並べてある。いずれもVHSDVD等で入手可能。

アメリカ合衆国のアダルトビデオメーカー 


ヨーロッパのビデオメーカー



LGBT
ポルノ映画



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


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